第3章 虎、退ズ
「あ、あの、でもこの子たちはいつもはとても良い子なんです。きっとあるじさまに会えて皆興奮してるんだと思います」
「五虎退は、他の兄弟と本丸の中でどんな風に過ごしているの?」
「えぇと、皆で遊んだり、戦いの特訓をしたりしています・・・だけど本当は僕、戦うのは向いてないんです・・・」
気が付けば五虎退の顔が泣き顔のようになっていた。
この本丸の中の仕組みを上手く聞き出そうとしたのに、
なんだかとても悪い事をしている気分だ。
「五虎退、あんまり戦に入れないようにした方が・・・いい?」
正直それは困るんだけど、目の前のか弱そうな彼を目の前にすると、どうしてもその辺りが甘くなってしまう
「え、いや、あの、えっと・・・本当は、そうしたい、です。だけど・・・」
一匹の虎を抱え上げ、五虎退は言い淀む。
いや、今気が付いたんだけど、いつの間にか立ち絵どころか普通に動画レベルの動きになってる・・・
「僕は・・・戦わないといけないんです。一兄と約束しました。必ず強くなってあるじさまのお役に立つ、って。だから・・・その・・・」
あまりのいじらしさに、罪悪感が込み上げて来た。
「・・・ありがと、五虎退」
そう言うと、泣きそうな顔が一転再び無邪気な笑顔に戻る
「はい!あ、あの僕、頼りないかもしれないけど頑張りますね」
・・・この流れだと、当初の目的が果たせそうに無い・・・
結局長谷部に聞くのが一番なのかなぁ・・・
ちょっと気が乗らないけど・・・止む無しと言うか。
五虎退といくつか会話のやり取りをした後、私はレベルの高めの男士と共に、彼を比較的レベルの低い場所へ遠征に送る事にした。