第1章 デジタル長谷部
あぁ、今日もレベリングお疲れ自分。
時計を見ると日付をとうに跨いでしまっていた。
明日は休みだけれど、早い時間から友達と会う約束をしてたので
こんな時間まで刀剣乱舞に夢中になってしまった事を少しだけ後悔する。
ブラウザゲームって始めると時間を忘れちゃうんだよなぁ
自分自身に小さく言い訳をし、
画面の向こうで近侍を務める「へし切長谷部」に目を向ける。
「はせべ、お疲れ。おやすみ」
部屋に誰もいないのをいい事に、つい言葉がこぼれた。
「主、こんな夜更けまでお疲れ様です。どうぞゆっくりお休みになって下さい」
・・・え!?
なに?今の!?
返事した!?
いやいやいや、ついに私もおかしくなったかな?
いや、これもしかしてこういうイベントなの!?
もう一度部屋の中に私以外いないことを確認し、
アホみたいだと思いつつも
恐る恐る声を出してみる
「長谷部、えーと・・・つ、疲れた?」
「いえ、私は疲れてなどいません。主こそお疲れのようですが?」
画面の向こうのキャラクターが相変わらず涼しい表情で正面を見ている。
はぁ!?!?
なにこれ・・・!?
思わずキーボードのwindowsマークとDキーを同時に押し、
ブラウザからデスクトップ画面に戻す。
心臓がバクバクして、背中に冷たい汗が流れる。
これが全ての始まり。
箱庭を覗いたら、そこに別世界があったお話。
どうやら私は明日の約束をドタキャンせざるを得ないみたい。