第1章 大切な君へ【藤堂平助】
巡察中。真夜中に道の片隅で涙を流しながらうずくまっているやつを見つけた。
飯を食べていないのか、顔はやつれていた。
俺と歳も近そうな彼女は、誰かに助けを求めているような……しかしどことなく満足そうな表情だった。
月明かりに照らされ、桜の舞い散る京の夜に見つけた彼女はとても綺麗で………俺は彼女から目を離せなくなっていた。
俺は彼女に近づいた。少し。ほんの少しだけ怯えていた。
声を掛けると怯えていたはずの彼女は安心したのか、眠りについた。
俺は彼女をおんぶして屯所に連れて行った。
素姓もわからないやつを連れて行ったら、みんなに怒られることはわかっていた。
『屯所じゃなくても、医者に連れて行けばいいだろう?』どんせみんなはこんなことをいうだろう。
それでも、俺は彼女と一緒にいたかった。