第6章 幸せの欠片
「政宗、今日は楽しかった?」
安土城を出て、御殿までの
道を二人でゆっくり歩く。
空には綺麗な月が昇っていた。
「ああ。凛にしては
上出来だったな。」
「もう!一言余計だよ。」
皆で一生懸命、考えたんだからね!と
頬を膨らませて見せる凛。
「そうだったな。悪い、悪い。」
ありがとな、と頭を撫でる。
退屈凌ぎには丁度良かった。
なによりも、一つ一つ言葉を
集めるうちに凛に一歩ずつ
近づいているという実感が湧き、
集めた言葉の意味が分かった時、
はやく会いたいと心から思った。
(凛の笑顔こそが俺の幸せだ。)
「ねえ政宗。私、もっと政宗を
支えていけるように頑張るからね。」
ふいに凛が呟く。
「楽しい事は倍にして、
辛い事は半分こにして、
ずっとずっと一緒にいようね。」
ふんわりと微笑んだ凛の顔は
月明かりに照らされて息を呑む程
美しかった。
「離せって言っても離してやらねえよ。」
政宗は立ち止まり、凛の
顎を掬い、優しく唇を喰んだ。
「‥ん。」
チュ‥という音と共に唇をはなすと
政宗は穏やかに微笑んだ。
(ああ、そうか‥。)
政宗は、ふと思いを巡らせる。
「はやく帰るぞ。」
「‥うん。」
広間をでてから離れる事なく
繋がれた手に、どちらからともなく
そっと力を込めた。