第6章 幸せの欠片
夕刻、信長を始め武将達も揃い
宴会が催されていた。
「これ凛が全部作ったのか?」
凄いじゃないか、と秀吉に頭を撫でられる。
「政宗に教えてもらって‥。」
えへへと照れたように微笑む凛。
「おい、秀吉。勝手に触るな。」
凛を挟んで反対側に座る政宗は
不機嫌そうに秀吉の手を払う。
「‥はあ。」
家康は凛が家康専用にと
作ってくれた激辛料理を
口に運びなから溜息をつく。
「‥家康様、具合が悪いのですか?」
その横では、家康を心配そうに
三成が見つめている。
「‥こっち見るな。食欲が減る。」
「やはり具合が悪いのですか?!」
「‥お前、言葉が通じないの?」
二人のやり取りを見て
ククっと喉を鳴らして笑う光秀。
「ほっといてやれ、三成。」
家康は傷心しているだけだ、と
口端をニヤリと上げる。
「なんとおいたわしい‥。」
「光秀さん、勝手な事言わないで下さい。
三成、その憐れんだ顔を今すぐ止めろ。」
(この二人の間とか、なんの罰なの。)
家康が盛大に溜息を吐くと、
ふと政宗と視線が交わる。
「なんだ家康、負けたのが悔しいのか?」
残念だったなと政宗が肩を竦めた。
「負けてあげたんですよ。」
凛の為だし、と最後の言葉は
聞き取れない程の声で呟く。
「秀吉さんはウリの名前当てで、
三成くんは書簡整理のお手伝い。
家康とは試合をして、
光秀さんとは何をしたの?」
凛は興味深々に尋ねる。
「何もしてねえ。」
政宗が少し不貞腐れたように
顔をしかめる。
「ククっ‥なかなか面白かったぞ。」
天守に駆け込んだそうだな、と
肩を揺らし、愉しげに笑う光秀。
「天守に?!」
御館様に失礼だろうが!と、
秀吉が得意の小言を言い始める。
「光秀がくだらねえ事言うからだ。」
「ほう、くだらん事か。その割には
大層、急いでおった様に見えたが。」
光秀は盃の酒を一気に飲み干し、
ニヤリと口端を上げた。
なんとなく予想のついた秀吉は
喧嘩になる前に止めるべく、
話題を逸らそうと口を開いた。
「御館様は何をされたのですか?」
凛も気になるよな?と
秀吉は微笑んだ。
「確かに!気になる!」
武将達の視線が、上座に座り
脇息にもたれかかる信長へと
一斉に集まった。