第6章 幸せの欠片
(よしっ、こんなもんかな!)
凛は政宗を喜ばせる為に
宴会の料理を黙々と作り続け、
ようやく一息つく。
政宗に悟られないように
さりげなくレシピを聞いたり、
こっそりと練習したりと
準備には苦労したけど‥。
「照月も付き合わせちゃってごめんね。」
料理を作る凛の足元で
オヤツに貰った鶏肉を
嬉しそうに食べている照月を見やる。
「がうっ!」
「ふふっ。照月は可愛いね。」
よしよし、と頭を撫でてやると
ゴロゴロと喉を鳴らし目を細める。
(政宗にも早く会いたいなあ。)
紙に書いた一文字ずつの言葉を
それぞれが政宗に勝負をしかけて
政宗が勝てば、渡していく。
その案を出したのは光秀だ。
――勝負事なら政宗も楽しめそうですね!
――まあ、何をするかは自由だからな。
――勝負事じゃなくてもいいって事ですか?
――そういう事だ。
俺は、面白いモノが見れればいい。
(政宗は楽しめてるかな。)
よし!と再び気合を入れ、
料理の仕上げを始めていく。
「えーっと、絹さやは筋を取って‥。」
凛が手を伸ばした瞬間、
後ろから誰かの腕に捕らわれた。
「‥捕まえた。」
「‥っ!ま、政宗!」
政宗は余裕の表情で
凛を見て微笑んだ。
凛はハッとして政宗から
身体を離し、照月を抱きかかえる。
「よ、よくここまで来たな!」
合言葉を言え!と照月の前足を持って
ピョコピョコと動かす。
「合言葉?ああ、これか。」
政宗は懐から五枚の紙切れを出し、
ニヤリと笑ってみせる。
「"あいしてる"‥だろ?」
「せ、正解‥。」
五文字を決めたのは自分なのに
なんだか恥ずかしくて目を逸らすと
照月ごと政宗に抱きしめられる。
「じゃあ褒美を貰わねーとな。」
な?照月?と、凛と照月を
交互に見て、ニヤリと笑う政宗。
「ほ、褒美は皆で宴会です!」
政宗ほど料理に自信はないけど‥と
腕の中で小さくなる凛。
「おいおい、俺の照月を誘拐して
そんなもんで済むと思ってるのか?」
御殿に戻ったら覚悟しとけ。と
掠めとるように口づけを落とす。
「‥っ!もう!」
唇を尖らせて見るものの、
楽しそうな政宗の表情に
凛も頬が緩んでいくのを感じた。