第6章 幸せの欠片
「おい、三成。いるか?」
スッと襖を開くと、
相変わらず本の海が広がっている。
「居ないのか?」
政宗が部屋に踏み込むと
奥の方からゴソゴソと音がする。
「あ、政宗様。丁度良い所へ。」
本の海に溺れながら三成が微笑んだ。
「おい、三成。紙切れを寄越せ。」
三成の言葉は無視して話を切り出す。
「それがですね‥。」
三成はチラリと本の雪崩部分を見やる。
「恥ずかしながら‥。
お渡しする紙を無くしてしまいまして。」
一緒に探して頂けますか?と
輝くエンジェルスマイルを繰り出す。
「お前な‥。」
周りにはいくつも雪崩が
起こったのであろう
本、本、本‥‥。
一体どこをどうしたら
こんな重ね方になるのかと思う程の
大量の本の山達。
本に埋もれた部分からは
微かに布団の角が見え隠れしている。
「‥仕方ねえな。」
はあ‥と大きく溜息をついて
手当たり次第に棚に収めていく。
「私は勝負事は苦手なので‥。」
そのままお渡ししようと思ってたのですが、
クリが先程部屋で暴れてしまって。
と、三成は微笑みながら本を整理する。
「‥ウリだろ。」
「凛様は本当にお優しい方ですね。」
政宗様の為に、このような催しを考えて
元気付けようとは‥と一人語り始める。
「おい、聞けよ。人の話。」
あと、凛を勝手に語るな。
そんな噛み合わない会話をしながら
二人は黙々と手を動かし、
一刻程の経った頃。
「あ!政宗様っ!ありました!」
三成が突然、声を上げる。
「本当か?!」
政宗は持っていた本を放り出し
三成の方に駆け寄る。
「はい!これです!」
どうぞと三成は政宗に紙切れを渡す。
『い』
「い?」
(『あ』と『い』?)
「なんでしょうね?」
隣で三成も首を傾げている。
「さっぱりわからん。」
(あと3枚‥。)
「確か‥次は家康様です。」
頑張って下さいね、と微笑む。
「家康か‥。」