第6章 幸せの欠片
「おい、秀吉。入るぞ。」
政宗は家臣達との制止を振り切り、
返事も待たずに襖を開く。
「お、政宗。来たか。」
秀吉は書簡に向かっていた身体を
ゆっくりとこちらに向ける。
「おい、どういう事だ?」
政宗は凛の手紙を
ヒラリと秀吉に見せる。
「まあ、付き合ってやれ政宗。」
秀吉は、ははっと笑いながらゴソゴソと
文机の下から紙切れを取り出した。
「なんだそりゃあ。」
「まあ、待て。」
秀吉は、不思議そうに見る政宗を
手で制止して続ける。
「よし。じゃあ言うぞ。」
「はやくしろ。」
苛々しているのか政宗は
両腕を組み、身体を揺らしている。
「この子の名前はなんだ?」
ニッコリと秀吉が政宗に問う。
「‥は?」
政宗が気の抜けた返事をした瞬間、
秀吉の背中からヒョコっと小猿が
顔を出し、小首を傾げる。
「‥答えなきゃいけないのか?」
「答えなければ先には進めん。」
可愛らしい顔の小猿は
秀吉の身体中を動き回っている。
「‥あー、なんだっけな。」
ポリポリと頭を掻く政宗。
「‥キュウリ‥。」
キキーッ!と小猿が声を上げる。
政宗に飛びかかろうとする小猿を
秀吉が抱き直した。
「残念。ハズレだ。」
秀吉は小猿の頭を撫でて、宥める。
「こんなに可愛いのになー、ウリー。」
と、秀吉は小猿の頭に頬ずりをした。
「あ‥。‥ウリ。」
「おっ!大正解だ!」
ようやく思い出したか!と
嬉しそうにしている秀吉は、
恐らく自分が答えを導いた事には
気づいていないようだった。
「じゃあ、これをやる。」
秀吉が政宗に一枚の紙切れを渡す。
『あ』
「あ?また謎かけか?」
めんどくせーなーと頭を掻く政宗。
「次は、三成の所だ。」
遊び疲れたのかスヤスヤ眠り始めたウリを
寝床に運びながら秀吉が微笑む。
「その紙と同じものを5枚集めればいい。」
そうすれば照月も取り返せるさ、と
秀吉は再び書簡に向かう。
「三成ね‥。」