第2章 どこまでも
「謙信様、本日は信玄様とお二人で
謁見を行って下さい。」
「さ、佐助くん?あの‥」
チラっと謙信を横目で見ると、
刀の柄に手をかけ、今にも切りかからんと
その瞳には怒りが見てとれる。
「いいんだよ、姫。こうも毎回、
政務に付き合わされては、気も詰まるだろう?」
「あんたは2人がイチャついてるのが
気に食わないだけでしょーが。」
(なんだか話が変な方向になってる!)
焦る凛を横目に、3人は
どんどん捲し立てていく。
「謙信様、"おはようからおやすみまで"
共に。‥それは、なんてライ○ンですか?」
(‥佐助くん、それ謙信様は絶対わからない)
凛は心の中でツッコミを入れる。
「姫、息苦しくなったら俺の所にくるといい。
一緒に団子を食べよう。」
「餌付けしてんじゃねーですよ。
‥凛、城下に行くなら俺が案内してやる。」
「あ、あのっ‥!」
この暴走した3人を止めなければと
凛が立ち上がりかけた、その時‥
それまで黙っていた謙信が
ユラリと立ち上がり、呟く。
「お前達‥よほど命が惜しくないと見える‥」
音もなく抜かれた姫鶴一文字に
謙信の怒りが伝わり、刀身が光る。
「‥‥あ、そういえば‥
お湯を火にかけたままかも知れない。」
謙信が間合いを詰めた瞬間、ボンッ!という
破裂音と煙幕が辺りに広がる。
「ごほっ‥くそ!佐助のやつ!」
煙が少し収まり幸村が腕で煙を払う。
「‥信玄様!俺達も引かねーと、やば‥い?」
幸村は辺りを見渡すが、すでに
信玄の姿は無くなっていた。
「‥げっ!あいつら‥!」
「お前はどうするつもりだ?」
「っつ!!」
振り向き様に金属音が鳴り響き、
幸村はかろうじて謙信の一撃を受け止めた。
「‥ほう。受けて立つか幸村‥。」
鍔迫り合いのまま睨み合う二人。
「‥だがな、今、俺は最高に気分が悪い。
容赦は‥せぬぞ。」
ぎゃあああぁぁぁ‥‥‥―――――。
数刻の後、春日山城に幸村の
怒りとも悲痛ともとれる叫びが轟いた。