第4章 桜カーニバル
「相手が誰であれ、姫は渡せないなあ。」
「信玄様まで!冗談はやめて下さい!」
恥ずかしさに耐え切れず、凛は
持っていた盆で顔を隠す。
「照れてる姫も可愛いね。」
どれ、抱きしめてあげようか?と
信玄が腕を出すのと同時に
謙信が立ち上がる。
「ん?どうした謙信。」
信玄の言葉を無視して、謙信は
凛に近づいていく。
「おい、それ以上凛に近づくな。」
秀吉が睨むのと同時に、
家康が刀を取り、柄に手をかける。
「‥その子に手を出さないでくれる?」
「‥やはり凛は連れて行く。」
これ以上、他の男に晒すわけにはいかん、と
刀を抜く謙信。
「面白え!やるか、上杉!」
凛は俺のモンだからな!と
政宗は嬉々として刀を抜く。
「え!ま、待って皆!」
ギャーギャーと刀を振り回し始めた謙信達を
凛が止めに入ろうとする。
「おい、凛危ねえ!」
幸村が凛を抱き寄せると
剣先が横を掠める。
「あ、ありがと幸村。」
「‥おー。」
照れているのか幸村の頬が赤い。
抱き寄せられた胸の中で
お互いに体温が上がっていく。
「ほう、抜けがけとは許せんな真田よ。」
ユラリと光秀が立ち上がる。
「凛様、すぐにお助け致します。」
「あ!ち、違うの!」
抜けがけとかじゃなくて!と
凛はパっと身体を離す。
「‥だ、誰がこんなイノシシ女!」
幸村も気まずそうに身体を離す。
「俺の姫にイノシシとは‥幸。」
「おい!あんたは味方しろよ!」
「幸村もライバルだったのか‥。」
「おい!佐助、お前もう酒飲むな!」
馬鹿野郎!と幸村は佐助の頭を小突く。
その様子を信長は脇息にもたれ
1人愉しそうに酒を呑んでいる。
「もー!やめてーー!」
凛の叫びは武将達の
喧騒にかき消されていった。
ハラハラと桜の花びらが舞い、
だんだんと桜が散っていく。
楽しい宴は、まだまだ終わりそうもない。
end.