第4章 桜カーニバル
「三成、上杉を離してやれ。」
「‥はっ。」
三成が掴んでいた腕を離すと
謙信がふんっと鼻を鳴らす。
「命拾いしたな、石田三成。」
俺の姫鶴一文字の錆になりたければ
いつでもこい、と笑う。
三成は硬い表情を崩さず一礼し下がった。
「じゃあ皆でお花見出来るんですね!」
信長様、ありがとうございます、と
凛が満面の笑顔を見せる。
「‥三成くんも!楽しもうね!」
ほら笑って?と凛が手を取り
三成の顔を覗きこむ。
「‥凛様がそう言われるのなら。」
三成は握られた手をぎゅっと握り返し
いつものエンジェルスマイルを向ける。
(あいつ‥どさくさに紛れて‥。)
武将達からの視線を知ってか知らずか
三成と凛は手を繋ぎ歩きだした。
「‥仕方ない。凛の為だ。」
秀吉はため息をついて後を追う。
「‥ククっ。兄貴は大変だな。」
「ちっ。三成に先を越されたか。」
光秀と政宗も続いて歩きだす。
「‥やはり斬るか。」
「天女を春日山に迎えればいいだけだ。」
信玄はポンと、謙信の肩を叩き歩きだした。
「‥めんどくさ。」
「‥めんどくせー。」
同時に声を発した家康と幸村は
一瞬顔を見合わせ、フィっと逸らした。
「‥ついてこないでよね。」
「うるせー。行きてえわけじゃねえ。」
顔を逸らしたまま家康と幸村も
宴の輪の方に向かっていく。
「信長様、ありがとうございます。」
残った佐助は信長に深々と一礼する。
「礼は良い。凛の為だ。」
存分に楽しむが良い、と信長も歩きだす。
「‥あの信長公と盃を交わせるとは‥。」
佐助は小さくガッツポーズをし、
(凛さん、ありがとう。)
足早に皆の背中を追い始めた。