第3章 【R18】交差する想い
「‥ねえ、家康。どこに行くの?」
青い空の下、賑やかな城下を
2人で並んで歩く。
「‥こっち。」
城を出てから数刻、繋がれた手は
離される気配は無く
気づけば城下町を離れていた。
やがて、家康が足を止め振り返る。
「‥着いたよ。」
そこには色とりどりの草花たちが
丘一面に広がっていて、
それはまるで大きな宝箱のようで
キラキラと輝いて見えた。
「‥綺麗。」
凛は、ほぅ‥と息を漏らし
消え入りそうな声で呟いた。
サァ‥と柔らかな風が凛の
長く綺麗な髪を揺らす。
「ありがとう、家康。」
家康を振り返り、微笑む。
優しく暖かな陽だまりのような
凛の笑顔。
家康は、ほとんど無意識に
凛を抱きしめた。
「い、家康?」
困ったような、驚いたような声が
家康の腕の中から聞こえる。
「‥あんたに伝えたい事がある。」
このまま聞いて‥と、抱きしめる腕に
ギュッと力を込める。
ドクン、ドクンとどちらのものか
わからない心臓の鼓動が二人を包む。