第3章 【R18】交差する想い
天気は快晴。
吸い込まれそうな青空が
頭上には広がっていた。
「‥よしっ!」
凛は新しい着物を降ろし、
まだ腫れの引かない瞼を隠すように
薄く白粉を付けた。
(‥もう大丈夫!)
両手で頬をパン!と叩く。
部屋から出ようと襖に手を掛け
勢い良く開いた。
「うおっ!?」
「わあっ!」
誰かとぶつかりそうになり
思わず大きな声がでる。
「‥ひ、秀吉さん?!どうしたの?」
そこには慌てた様子でたじろぐ秀吉の姿。
「‥まあ、なんだ‥顔色は良さそうだな。」
頭をポリポリかきながら微笑む秀吉。
(秀吉さんにも心配かけちゃったな。)
「もう大丈夫だよ!心配かけてごめんね。」
心配症で兄のように優しい秀吉に
今日は曇りのない笑顔を向ける。
秀吉はその表情に一瞬動きを止める。
「‥?‥秀吉さん?」
首を傾げ、秀吉を心配そうに見つめる凛。
「‥あ、ああ。なんでもない。」
元気そうで何よりだ、といつものように
頭をクシャっと撫でる。
秀吉の表情からは安堵が見て取れた。
「今日は天気もいいし、久々に
城下に行こうかなって。」
「そうか。あまり遅くなるなよ?」
二人で他愛ない話をしながら
廊下を歩いていると、
正面から歩いてくる家康が見えた。
「‥あ、家康!」
家康に気づくと凛は
タタっと駆け寄った。
「‥どこ行くつもり?」
少し、不機嫌そうな声の家康。
「あ、あのね、久々に城下に
行ってみようかなって。」
ふにゃっと微笑む凛に
少し安心したような家康は
フィっと顔を逸らす。
「‥そう。じゃあついてきて。」
それだけ告げるとスタスタと歩きだす。
「え?家康?!‥ちょっと待って!」
凛は慌てて追いかける。
最中、振り返り秀吉を見ると
眩しそうに二人を見て微笑んでいる。
「気を付けて行けよ!」
その表情は優しく、少し切なげだった。
「行ってきます!」
秀吉に笑顔で手を振り
凛はもう振り返らずに
家康を追いかけていった。