第3章 【R18】交差する想い
静寂が天守を包んでいた。
聞こえるのは風が木々を揺らす音。
「‥失礼します‥。」
凛が立ち上がろうと膝を立てる。
その瞬間――
腕を捕まれ視界が反転する。
「‥っつ!」
凛が気づいた時には
背中が畳に触れ、目の前には
冷めた瞳で信長が覆いかぶさっていた。
「‥離してっ!離して下さい!」
押さえつけられた腕に力を込める。
「俺が手に入れた"モノ"を
やすやすと手放すと思うか?」
愉しそうに口端を上げる。
「‥私は‥あなたの"モノ"じゃないっ!」
堪えていた涙がポロポロと溢れる。
瞬間、信長が襖に視線を走らせた。
「‥子鼠がおるようだな。」
フッと笑みを零し、片手で凛を
押さえ付けたまま空いた手に刀を取る。
(‥子鼠‥?いったい何を‥)
片手で押さえられているハズなのに
どれだけ力を込めても振りほどけず、
凛も目線を襖に這わす。
「‥入れ。」
一段と低い信長の声が響くと、
少しの間を置き、襖が開いた。
「‥いえ‥やす?」
そこには鋭く信長を見据える家康の姿があった。
(‥なんで‥ここに。)
混乱する凛をよそに、
睨み合う信長と家康。
「信長様、今すぐその手を離して下さい。」
部屋に入り、少しずつ間を詰める。
「ほう‥俺に楯突くか、家康。」
ククっと喉を鳴らし、信長が笑う。
「‥嫌だと言ったら、どうする?」
凛の腕を捕らえる手に力を込める。
「‥っい‥た。」
凛は突然に込められた
手の力に思わず顔を歪める。
「‥力づくで止めるまでです‥。」
家康の静かな怒りの籠る声と同時に
周りの空気がピンと張り詰めた。