第3章 【R18】交差する想い
いつもの道を歩く。
天守に続く暗い廊下を
ぼんやりとした蝋燭の灯りを持って。
―――待ってるから。
家康の言葉が凛の心を
暖かく照らしてくれた。
誰かに必要とされることで
こんなにも強くなれる。
(‥大丈夫。もう‥迷わない。)
凛は蝋燭を持つ手に力を込めた。
「‥失礼します。」
「入れ。」
いつもと変わらない信長の声に
一瞬、身体が強張る。
ゆっくりと襖を開けると、
そこにはいつものように
盃を傾け、星を眺める信長の姿。
襖を閉め、傍に歩み寄る。
「‥今宵は星がよく見える。」
隣に腰を降ろし、同じように
空を見上げる。
そこには眩い星たちが
空いっぱいに広がっていた。
「‥綺麗。」
(そういえば最近空なんて見てなかった。)
こんなにも綺麗だったんだな。
ほぅ‥と星を眺めていると
ふいにおろしていた髪の毛を
一房掬い上げられる。
「どうした?なにかあったか?」
ニヤリと口端を上げる信長。
その笑みに凛は背筋が
ゾクリと粟立った。
「‥信長様。」
凛は信長に向き直り、
冷えきった瞳を真っ直ぐに見つめる。
「‥私は信長様をお慕いしていました。」
震える手をぎゅっと握り、
震えそうになる声を絞りだす。
「ほう。それで?」
信長は愉しそうに目を細める。
「‥でも気づいたんです。」
俯いてしまいそうになる顔を
グッと堪えて、前を向く。
「‥ここに‥。信長様の中に‥
私の居場所は無いんだって事に‥。」
溢れそうになる涙を飲み込む。
「だから‥今日で終わりにしたいんです。」
この想いも、この関係も。
城から追い出されるかも知れない‥。
それでも、前を向いて一歩を踏み出したい。
「‥それを伝えに参りました。」