第3章 【R18】交差する想い
「‥凛、起きてる?」
襖の外から家康の声がした。
「どうぞ。」
短く返事をすると、静かに襖が開き
入ってきた家康の手には薬があった。
後ろ手に襖を閉め、ゆっくりと
布団の近くに腰を降ろす。
「‥寝癖ついてる。」
よく眠れてよかった、とは言えず
天邪鬼な性格が顔を出す。
「え!嘘!」
慌てて髪の毛を抑える凛。
その様子を家康は眩しそうに見つめる。
夕日に照らされた凛は
キラキラと輝いてみえた。
「凛‥話がある。」
家康は薬を傍らに置き、座り直した。
「なに?」
自分を真っ直ぐ見つめる家康の瞳を
凛も真っ直ぐに見つめ返す。
「‥俺は‥」
家康は思わず視線を逸らしたが
その横顔は夕日のせいか
ほのかに赤く染まっている。
拳をグッと握り直し、ゆっくりと
もう一度凛に向き直る。
「‥単刀直入に言う。」
「‥あんたが、好きだ。」
いつもと違う、低く少し掠れた声。
予想もしなかった言葉に
凛の瞳が大きく開かれる。
「‥な‥んで‥。」
もっと何か言わないと、と頭では
思うのに口から漏れた一言は震えて
それだけを言うのが精一杯だった。
「‥最初はなんとも思ってなかった。」
信長様の寵愛を受けてて、
弱っちそうで、すぐ死にそう。
それくらいだった。
「‥俺はあんたに昔の自分を
重ねてたのかも知れない‥。」
わけもわからずこの場所にきて、
見知らぬ人に囲まれて、
モノのように扱われて、
逃げ出すことも出来ずにいた。
昔の俺は、無力で弱くて
ただ周りを憎んで
ひたすら耐える事しか出来なかった。
「‥でも、あんたは違った。」