第3章 【R18】交差する想い
「凛、夜伽をしろ。」
「褥を暖めろと言っている。」
いつもの天守で、大好きな人の声。
でも‥なんでだろう。
ぼんやりとしていて、
その姿は、よく見えない。
私のタイムスリップの話を聞いても
疑わず、信じてくれた。
無茶苦茶だけど頼もしくて、
強くて、カッコよくて、
悪戯を覚えた子供のような笑顔。
囲碁を教えてくれた優しい顔。
褥での凛々しい顔。
全部、全部‥大好き。
‥でも、モヤがかかったように
顔が見えないのは、何故?
「――信長様‥。」
ふと、凛が目覚めると
外の雨は止み、夕日が差していた。
(夢か‥)
何故だろう。
まだ頭に霞がかかったように
ぼんやりとしている。
布団から身体を起こすと
家康が巻いた包帯が見えた。
(‥家康。)
そっと包帯に触れる。
きっと今夜も夜伽を命じられる。
こんなにも心は軋むのに、
会えると思えば嬉しくて、
嘘でも抱きしめられたくて、
その温もりを感じたくて。
(‥でも終わりにしなきゃ。)
本当は、とっくに気づいてた。
独りになりたくないだけだと。
此処での居場所を失いたくないだけだと。
淡い恋心は、いつのまにか
ただの執着になっていた事。
それでしか、必要とされてないと
自覚するのが怖かった‥。
―――今日で最後にしよう。
この曖昧な関係を終わりにして、
前を向いて歩いて行こう。