第13章 俺の相棒【刀剣乱舞コラボ】
「それは‥。」
「お待たせ致しました。」
言い淀む凛の言葉を
遮るように女将さんが
美味しそうなあんみつを二つ、
凛と宗三の間に運ぶ。
「おや、来ましたね。」
「あっ、そうですね!食べましょう!」
匙で一口掬い上げ、口に運ぶと
ほろ甘い小豆の味が広がった。
「美味しいですね。」
「‥そうですね。」
美味しそうに食べる宗三を横目に、
凛は、まだ質問の答えを
出せないでいた。
「おやおや。これは‥。」
その様子を影から見つめる光秀は
クククッと愉しそうに笑う。
「小娘はどうするのだろうな。」
なあ、薬研藤四郎?と呟く。
「ありゃ、気づかれちまったか。」
ザザッと小さく音を立て、光秀の横に
樹上から舞い降りた薬研は
肩の木の葉を払いながら笑った。
「隠蔽には自信あったんだが。」
「誰かまでは確信は無かったが、」
時には感も役に立つ、と凛に
視線を戻した。
「あの嬢ちゃんは何者だ?」
「さてな。」
それは我らの知る所ではないが、と
光秀が言葉を切る。
「何かあれば容赦はしない。」
穏やかな声色とは裏腹に
光秀が纏う空気が重くなる。
「‥何もしやしねえさ。」
ゾッと毛が逆立つ感覚を覚えた薬研は
フルフルと小さく首を振った。
「‥ただ、嬢ちゃんが敵さんに
狙われる可能性は多いにある。」
精々、気をつけてやってくれと
薬研は風を舞い上げ姿を消した。
「心して置こう。」
図らずも、時を越え、時空を歪め
歴史をも変えた凛の存在は
時間遡行軍にとって格好の餌。
どこからか嗅ぎ付け、それを機に
この時代を手中に収めようとする
可能性は多いにある。
「僕らと戻る方が貴方の為なんですよ。」
この時代は危険すぎる、と
食べ終わったあんみつの器を見つめながら
宗三がボソリと呟く。
「宗三さん‥。」
「‥と言っても、帰る手立ては
まだ分かりませんけどね。」
僕らも帰れるか怪しいものです、と
ため息混じりに宗三が笑って見せた。
「そう‥ですね。」
言葉の端々から宗三は
凛を心配しているだけだと
わかるほど優しかった。
自分の身に危険が迫るかも知れない事は
確かに怖かったが、
それでも凛の答えは決まっていた。