第13章 俺の相棒【刀剣乱舞コラボ】
朧げに輝く月が闇に浮かび
安土の町は静寂に包まれている。
「‥‥。」
隣で寝息を立てる愛しい恋人を
起こさぬようにそっと起き上がり
凛は、そろそろと部屋を出た。
お気に入りの中庭を通ると
夜の帳が降りた刻では、
昼間の生き生きとした木々達も
静かに風に揺れている。
「‥あれ?宗三さん?」
腰まで伸びた桃色の髪を風に任せ、
少し乱れた寝間着で佇む姿は
男性とは思えない程、色気がある。
「‥ああ、貴方ですか。」
フッと微笑むと宗三は
中庭を望む縁側にフワリと腰掛けた。
「深夜の女性の一人歩きは感心しませんね。」
「あ‥厠に‥。」
と、凛が俯くと
宗三がクスクスと笑った。
「それは大変ですね。」
行ってらっしゃい、と
宗三は再び中庭に視線を戻した。
凛が用を足して戻ると
まだ宗三の姿がある。
「‥眠れないんですか?」
「‥少し。」
凛は宗三の横に腰掛けると
二人で中庭を眺めた。
「‥宗三さんって信長様の刀なんですか?」
「どうしてです?」
凛は、少し悩む素振りをした後、
「薬研くんは信長様の懐刀‥
その薬研くんと長谷部さんと三人で
安土城に入る前、厳しい顔をしてたから。」
違ったらごめんなさい、と
凛は笑った。
「‥そうですよ。」
薬研、長谷部、不動、様々な刀と
魔王の元で暮らしていました、と
懐かしむように宗三は遠くを見つめた。
「‥皆さん、信長様が嫌いなんですか?」
「嫌い‥とは違いますね。」
消え入りそうな声で宗三は言った。
「僕は使われなかったんです。」
刀として生まれ、人を切るために
鍛えられた僕の刃を
あの人はただ手元に置いていた。
腰に下げる事もなく、
戦場で振るわれる事もなく
まるで籠の鳥。
「それが許せないんです。」
貴方には分からないでしょうね、と
二色の瞳を震わせた。
「長谷部と薬研も理由は違えど
許せない事があるだけですよ。」
フッと微笑んだ宗三は立ち上がり
凛の手を引いた。
「そろそろ部屋に戻りなさい。」
怖い人が出てくる前にね、と
背中を押す。
「え?あのっ‥。」
「おやすみなさい。」
そう言い残すと宗三は背を向け
客間に戻って行った。
「おやすみ‥なさい。」