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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


「おい‥聞いたか?」
秀吉がわなわなと手を奮わせる。

「‥つまり‥」
政宗が面白いと言わんばかりに
口角を上げる。

「‥‥つまり、凛のお腹に」
と、言いかけた家康の口を秀吉が塞ぎ、
家康がモゴモゴと不満気に何かを呟く。

「言うな、家康!」
これは御館様の口から直接‥と
秀吉が何かを堪えていると、
家康の隣に居た三成がポンと手を打ち
秀吉にエンジェルスマイルを向けた。

「つまり凛様が
ご懐妊なさったのですね!」

ピシッと秀吉が石の様に固まり、
それを見て政宗が大笑いする。
家康はその隙に秀吉から逃れ、
三成はニコニコと輝く笑顔を浮かべている。

「おっと、こうしちゃいられねえな。」
今日はどうせ宴だろ?と政宗は、
先に戻ると言い残し去っていった。

「では、私も宴の手配を手伝いに戻ります。」
秀吉様をよろしくお願い致しますね、と
お辞儀をして三成は政宗の後を追った。

「‥は?」
ちょっと‥と呼び止める声も虚しく、
空に消えていった。



「これが良いっ!」

徳姫が手に取ったのは
淡い水色の柔らかい布地。

「あら、弟様なのですか?」

「わからないけど‥これがいいっ」
きっと似合うの!と徳姫は
嬉しそうに反物を眺める。

ふふっと店主は微笑み、
徳姫の選んだ反物を受け取り、
丁寧に畳んで風呂敷に包んだ。

「姫様はきっと良い姉君に為られますわ。」

えへへっと徳姫は照れたように微笑んで
お代をきちんと払い、店を後にした。



「よしっ!」
(はやく城に戻らないと!)

徳姫は背中に風呂敷を背負い
胸に花束を抱えて、来た道を歩きだした。


「‥秀吉さん、秀吉さん!」

「‥ハッ!」

秀吉が遠い世界から意識を取り戻し
我に帰ると、ガシッと家康の両肩を掴んだ。

「‥家康、徳姫は任せたぞ。」

「‥は?」

言うが早いか、秀吉は駆け出し
その姿はすぐに人混みに紛れて行った。

「‥はあ。」

家康は重たい溜息を吐いて
徳姫を追い、通りに向き直る。


(‥どこ行った?)
少し目を離して居た為か
徳姫の姿を見失い、辺りに
視線を彷徨わす家康。

「‥くそ。」
まだ日は高く、慣れた城下とはいえ
織田家の姫を狙う輩が居ないとは
限らない。

(‥おまけに)
凛に似て可愛いし‥と言う言葉は
ぐっと飲み込み家康は駆け出した。
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