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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


「どうだい、一緒に団子でも。」
ここの甘味は、なかなか‥と
信玄が口にした所で
背後に幸村が忍び寄る。


「ガキを口説いてんじゃねーすよ。」
あと甘味は控えろと何回言わせんだ、と
侮蔑の視線を送りながら信玄の耳を
思いっきり引っ張る。

「痛たたた。」
やあ、幸。奇遇だな、と
信玄はヒリヒリと痛む耳を抑えて
幸村に笑顔を向けた。

「奇遇も何もねー。」
行きますよ、と信玄の襟を掴み
そのままズルズルと引きずる様に
その場を離れる。

「姫、また会いにくるよ。」
ヒラヒラと手を振り、信玄は
なされるがままに去っていった。



ポツンとその場に残された徳姫は
ハッと自分の目的を思い出し
ブンブンと首を振る。

(変な人は気にしちゃダメっ!)

グッと拳に力を込め、胸に抱えた
綺麗な花を見やると
父の喜ぶ顔や、母の嬉しそうな顔を
思い浮かべて前を向き直した。

「こんにちわ!」

反物屋に駆け込んで行く徳姫の姿を
こっそり見守る4つの影は
ホッと安堵の溜息を漏らしていた。

「お前たち、ちゃんと見張ってたのか?」
危うく大騒ぎになるとこだ!と秀吉が
得意の小言を垂れる。

「そんなに怒るな。いい男が台無しだぞ。」
なあ、家康?と視線を投げる政宗。

「‥俺に振らないで下さいよ。」

「御三方!お静かに!」


「いらっしゃいませ、徳姫様。」
何度か母と足を運んだ反物屋は
徳姫にも馴染みがあり、
この女店主とも何度か話をした事がある。

「本日はお一人で?」
キョロキョロと辺りを見渡す女店主に
ふんっと胸を張ってみせる。

「徳ね、おつかいしてるの!」
えヘヘっと手に持っていた花を見せて
誇らしげに微笑む徳姫に
釣られて店主も笑顔になる。

「あらまあ!それは素晴らしい!」

「徳ね、もうすぐおねえさんになるの!」
だからその子の産着に使う反物を
母上が買ってきてって!と
瞳をキラキラさせて微笑む徳姫。

「あらあら!おめでとうございます!」
では、こちらの柔らかい素材に‥と
店主が徳姫を生地の方に案内する。

その瞬間、表の方から
ガタガタと何かが壁に当たる音がした。

「?」
徳姫がふと振り返るが
表にはいつも通りの人々の往来が見えた。

「に‥にゃ~」

「ねこさん‥?」

「徳姫様?」
少し首を傾げた徳姫だったが
店主に呼ばれ、店の奥へと駆けていった。

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