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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


「‥政宗さん。」

「どうした?」
何度も欠伸を噛み殺している政宗に
家康が視線を送る。

先程、三成からの伝令で
安土に武田、上杉達が居ると聞き
辺りを警戒していた家康達は
反物屋の陰に身を潜めていた。

「‥まさかとは思いますけど。」

家康がスッと指で指し示した先には
反物屋の向かいの茶屋で
大柄な男が団子を頬張っていた。

「‥本当に居るとはな。」

「‥どうします?」
もうすぐ徳姫が来ますよ、と
家康は通りの方を見やる。

「邪魔者は排除すんだろ?」
ニヤリと政宗が笑う。

「‥はいはい。」


二人が通りに踏み出そうとした
まさにその時、凛に
よく似た鈴の鳴るような
可愛いらしい声が聞こえた。

「ついたー!」

踏み出しかけた足を戻し、
政宗と家康は顔を見合わせた。

「危ねえ、危ねえ。」

「‥信玄は?」

そろそろと顔を通りに向けると
茶屋に姿は無く、代わりに
ニコニコと通りを歩く姿が見えた。

「‥まずい。」

「‥まずいですね。」


―――時すでに遅し。

「これはこれは、可愛いらしい姫君。」
お買い物かい?と信玄が声を掛けたのは
紛れもなく徳姫。

キョトンとした顔で信玄を見上げている。

「君の様な、可愛いらしい子に
会えるなんて俺は最高にツイてるな。」

「‥‥。」

明らかに不審がる徳姫を他所に
勝手に話を進める信玄。

「‥あ。」

「家康、どうした?」

家康が指差す方を見やると
徳姫から少し後方に
鬼の形相をした秀吉と、
家康達を見つけ手を振る三成、
その横には目を片手で覆い
天を仰いでいる幸村。

「あー‥ありゃ相当怒ってるな。」

「‥そうですね。」
なんで真田幸村まで‥と
家康は今日何度目かの溜息をついた。



「なんか嫌な予感したんだよなー‥」
と、主君の醜態に幸村は天を仰ぐ。

「あいつら何やってたんだ!」
秀吉は早くもお説教モード。

「‥いかが致しましょう。」
と、怒り狂う秀吉の横で三成は頭を撚る。


「大丈夫だ。俺が行く。」
幸村は大きく溜息をつくと、
一歩進み出た。

「幸村、すまん。よろしく頼む。」

「ありがとうございます。」
三成が深く頭を下げる。

「礼はいらねー。」
うちの主君が迷惑かけたな、と
幸村は未だ困り顔の徳姫に
ニコニコと語りかける信玄を
睨み据えて歩き始めた。

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