第12章 二人の宝物 三章
「なんか、益々信長に似てきたな。」
「おい、御館様を呼び捨てにするな!」
「お二人共!お静かに!」
そんな3人組に気づく事なく
店に入っていく徳姫。
「こ‥こんにちわ!」
店主に話かけた事などない徳姫は
ドキドキしながら声を掛ける。
「おやおや、徳姫様。ようこそ。」
ニコニコと笑顔を浮かべる店主に
徳姫の緊張が少し和らいだ。
「何をお探しですか?」
「父上の‥お部屋に飾る花を‥。」
段々、小さくなる声にも
店主は笑顔で応えてくれる。
「ならば季節の花がよろしいですね。」
凛様は、いつもこの辺りから‥と
花の前まで案内してくれる。
目の前に沢山の綺麗な花が並び
どれも鮮やかで美しい。
「わあ!きれい~!」
キラキラと目を輝かせて喜ぶ徳姫は
どれがいいかな~?と目移りしている。
「見ろ、三成。凛そっくりだ。」
「ええ、本当に愛らしいです。」
「‥お前ら大丈夫か‥?」
徳姫の様子を見守る秀吉達は
周りの不審がる様子に気づく事は無い。
「決めた!これにする!」
徳姫が選んだのは木瓜の花。
鮮やかな赤に丸みを帯びた花弁が
美しく、凛としている。
「良い花を選ばれましたね。」
ではお包み致しますね、と
店主は木瓜の花に合うよう
かすみ草なども入れて丁寧に包む。
(父上‥喜んでくれるかなあ‥)
「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」
代金を払って徳姫はニッコリ微笑むと
店主は優しく微笑み、
外まで見送ってくれた。
大きく手を振り、花を抱え直して
元気に歩き出す徳姫。
店主が笑顔で見送るのを見届け、
秀吉達も動き出す。
「あいつ、まだどっか行くのか?」
「あいつじゃない。徳姫様だ。」
よし、三成。追いかけるぞ、と
秀吉達が歩き始めると
やれやれと幸村が溜息を吐く。
「真田様もいらっしゃるのですか?」
「‥なーんか、嫌な予感がすんだよ。」
幸村が思い浮かべたのは主君の顔。
とにかく面倒事だけは止めてくれ、と
願いながら幸村も歩き始めた。