第12章 二人の宝物 三章
「‥以上が作戦の概要になります。」
日が昇り、爽やかな朝が訪れる。
安土の空は大いに晴れ渡り
絶好のお使い日和。
再び広間に集結した武将達は
秀吉と三成が練った作戦を聞き
各々の役割を確認していた。
「全員、頭に叩き込んだか。」
信長はいつもの様に脇息にもたれ、
くれぐれも凛に悟られぬよう尽くせ
と、武将達に念を押す。
「はっ!」
必ずや!と、秀吉が力強く応える。
「私は秀吉様と花屋の前で待機ですね。」
頑張りましょうね!という三成の
エンジェルスマイルは
今日も絶好調に輝いている。
「‥政宗さんと反物屋前で待機‥。」
手渡された紙を見て、家康が
至極面倒くさそうに目を細める。
「‥これ、俺要ります?」
「まあ、そういうな家康。」
何事も楽しまなきゃ損だろ?と
政宗が笑ってみせる。
「‥そういう問題じゃないし。」
「俺は城から城下までの道か。」
これはこれは‥大役だな、と
光秀がクククッと喉を鳴らす。
「もし、徳姫に害を成すものが居れば
徳姫に悟られぬよう即刻排除しろ。」
‥よいな?と言う信長の瞳は、
見た者全てを威圧するような
魔王の名に相応しい目をしていた。
「信長様?」
スッと襖が開き凛が顔を出すと
瞬間、武将達はあたかも軍議を
していたかのような空気を作り出した。
「‥報告は以上です。」
「では、この件はこれで終いだ。」
持っていた扇をパシンと閉じると
そそくさと武将達が立ち上がる。
「お、おはよう。凛。」
どこかぎこちない笑顔の秀吉。
「凛様、おはようございます。」
今日もいいお天気ですね、と
いつもと変わらない三成。
「‥三成、邪魔なんだけど。」
はやく行ってくれる?と
目も合わせない家康。
「よお、凛。」
今日も可愛いな、と頭を撫でて
出ていく政宗は口笛を吹いている。
「?」
凛は撫でられた頭に手を乗せ
不思議そうに政宗を見つめる。
「凛、そこに居られると
俺が出られないんだか?」
「あっ、ごめんなさい。」
凛は、背後で
愉しげに笑う光秀に道を開けた。
「ではな。」
「‥‥?」
(なんだか‥みんな、へん!)
わいわいと廊下を歩く武将達を
凛は暫く、見つめていた。