第11章 二人の宝物 二章
「謙信様、信玄様。」
佐助はゆっくり振り返ると
ふん、と鼻を鳴らし目を据える謙信と
いやあ、はははっと肩をすくめる信玄を
静かに見つめた。
「ぱぱ?」
心配そうに眉を寄せる幸に
安心させる様に優しく微笑み
ふわりと頭を撫でる。
「この子の父親として‥。
いや、パパとして言わせて頂く。」
「‥ぱぱ?」
「父親という意味らしいぞ。」
母親は"まま"だそうだ、と
首を傾げる信玄に謙信が
小声で耳打ちする。
「この子は俺達の宝物です。」
凛の腕から
ヒョイと幸を抱き上げ
謙信と信玄の眼前に掲げる。
「‥違うな、俺の宝だ。」
「謙信、黙って聞け。」
信玄にピシャリと言われ、
ふんと鼻をならして黙る謙信を
見届けてから佐助は言葉を続けた。
「だから、この子の望みは
出来るだけ叶えてあげたい。」
それが、仲良くして欲しいという
可愛い望みなら尚更です。
と、謙信と信玄を交互に見やる。
「この子の望みを叶えてやって下さい。」
幸を床に降ろすと少し躊躇ったあと
タタタっと謙信と信玄の間に
ちょこんと腰を降ろした。
綺麗な大きい瞳が二人を見つめると
仕方ないと言わんばかりに溜息が漏れ、
謙信が幸にふっと微笑んだ。