第11章 二人の宝物 二章
「お前の望みならば仕方ない。」
そう言って謙信は幸の右手を握ると
信玄に視線で合図する。
「そうだな。可愛い天使の望みだ。」
信玄が幸の左手を握り、微笑むと
二人と両手を繋いだ幸は
ニッコリと天使の笑顔を振りまいた。
「やはり、この笑顔は譲れな‥」
「おい、信玄。口を閉じろ。」
二人が同時に視線を下げると
可憐な笑顔で幸が呟いた。
「どっちも、すき。」
気まぐれな小悪魔天使に翻弄される
主君を見ながら佐助と幸村は
やれやれと肩をすくめた。
久々の再会で寝ずの宴が続く中、
スヤスヤと眠る幸を抱いた凛と
佐助が自室に向かって歩いていた。
「ふふ、幸楽しそうだったね。」
腕の中で眠る我が子にそっと微笑む。
「うん。凛さんは?」
「もちろん、私も楽しかったよ。」
幸によく似た可憐な笑顔で
凛はふわりと微笑んだ。
「佐助くん、ありがとう。」
「‥え?」
月明かりの下で、凛が
真っ直ぐに佐助を見つめる。
「宝物って言ってくれて嬉しかった。」
「凛さん‥。」
謙信と信玄を嗜める為もあるが
それは、まさしく佐助の本心だった。
共に時を超え、再会し、
惹かれ合い、思いを通じ合わせた。
まさに運命のような恋。
「幸は、宝物だよ。」
恋が愛になり、形になった。
「幸は俺達の幸せの証だから。」
凛を抱き締めると
間で幸が幸せそうに微笑む。
その寝顔を二人で見つめて
ふふっと笑い合う。
「どんな夢、見てるのかな?」
「すごく幸せな夢だと思う。」
「‥うん。そうだね。」
月明かりが優しく見守る中、
喜びと幸せを噛み締めながら
しばらく三人で寄り添っていた。
end.