第11章 二人の宝物 二章
「やあ、幸。今日も可愛いね。」
まるで天使のようだ、と
ニッコリと微笑む信玄。
「信玄様、お久しぶりです。」
ほら、幸ご挨拶は?と
抱き上げていた幸を床に降ろすと
ペコッと頭を下げて凛の
後ろに隠れてしまった。
「おや、振られてしまったかな。」
「ふふ、残念ですね。」
やれやれと大袈裟に肩を竦めてみせる
信玄に凛も笑みを溢す。
「いねえと思ったら、何してんすか。」
「うちの娘を口説かないで下さい。」
信玄を挟み込むように現れた二人に
驚きもせず、信玄は益々笑みを深めた。
「おい、遅いぞ。」
「けんしん!」
少し苛立ったように歩いてきた謙信に
タタタっと幸が駆け寄る。
「‥っ!」
「あっこして!あっこ!」
足元に抱きつき、上目遣いで
謙信を見上げる幸を一瞥すると
文句も言わずに抱き上げる。
「ふふ、けんしんー。」
抱っこしてもらい満足気な幸を見て
信玄の目が愉しげに細められる。
「ほー。やるじゃないか謙信。」
「黙れ。切り刻むぞ。」
「そう言うな。天使が怖がるぞ。」
はははっと謙信の肩を叩き、
広間に向かって連れ立って歩き出す。
「‥謙信様に懐いてんのか?」
幸村が信じられないといった表情で
先に歩く三人を見やる。
「それだけじゃない。」
「謙信様も幸に甘々なの。」
佐助と凛が交互に答えると
幸村は益々、顔を引きつらせた。
「‥佐助、頑張れよ。」
「ああ、対謙信様用のまきびしは製作中だ。」