第10章 Enjoy Summer
「では食材も揃ったんで始めましょう。」
皆が浜に上がってくる頃に、
ひょっこりと姿を見せた佐助。
「おー。ってお前、どこに居たんだよ!」
「それは後のお楽しみだ。」
幸村のツッコミをさらりとかわし、
テキパキと指示を出し始める。
網の上には信玄と謙信が
採ってきた魚や、サザエ。
切った新鮮な野菜達が
所狭しと並んでいる。
「お前ら、こっちも食えよ。」
丸太を削って作った台の上には
重箱に綺麗に敷き詰められた
政宗特製の料理が並ぶ。
「いただきまーす!」
凛はニコニコと手を合わせる。
「ほら、凛。これ焼けたぞ。」
いっぱい食べろよ?と、秀吉は
凛の横で甲斐甲斐しく世話を焼く。
「政宗さん、七味ないんですか?」
「家康、お前のはこっちだ。」
ほら、と別に分けてある重箱を
取り出すと家康に渡す。
「げっ。なんだそりゃ。」
家康の隣に居た幸村が
真っ赤な根菜の煮しめや、
魚の煮付けなどを見て絶句する。
「‥あげないけど。」
「いや、いらねーから。」
「ばーべきゅーとは初めて聞きました!」
城に帰ったら文献を調べてみましょう、と
三成が瞳をキラキラさせて金網を見やる。
「三成、見てないでちゃんと食べろよ?」
「そうだよ、三成くん!」
ほら、コレ美味しいよと
網の上で焼き上がった椎茸を
箸で三成の前に差し出す。
「そうですか?では‥」
パクっと差し出されたままに
美味しそうに椎茸を頬張る三成。
「凛様から頂くと
より一層美味しいですねっ。」
キラキラとエンジェルスマイルで
にっこり微笑むと、凛の頬が
みるみる赤く染まっていく。
「凛様?どうされました?」
固まる凛の横で
盛大にため息を吐く秀吉。
「こりゃあいい!」
と、政宗が笑えば隣では家康が
持っていた箸をボキっと折る音がする。
「あの石田三成にあーんか‥羨ましい。」
「おい、佐助。俺に箸を向けるな。」
切られたいのか?と冷ややかに
佐助を見やる謙信。
「姫、俺もあーんして欲しいんだが。」
「いーから、さっさと食べて下さい。」
熱々の魚を丸ごと信玄の口に持っていく幸村。
「信長様、先を越されましたね。」
クククッと光秀が笑って見せると、
「策士め‥。」
と信長が愉しげに目を細めた。