第10章 Enjoy Summer
「信玄様!謙信様も!」
助かった、と言わんばかりに
凛は二人に駆け寄った。
「わあ!大きな魚!」
信玄と謙信の手には
吊り下げられた魚達が
何匹もぶら下がっている。
「可愛らしい姫の為に採ってきたんだ。」
まあ、俺としては魚より
君を食べたいくらいだけどね、と
艷のある微笑みを浮かべる信玄。
「か、からかわないで下さい!」
赤くなる頬を抑えると、
横に立つ謙信がふんと鼻を鳴らした。
「信玄。魚より、お前を捌いてやろう。」
と、横目で信玄を睨みつける。
「残念だが、男に捌かれる趣味は無い。」
(こっちも穏やかじゃない!)
心の声が口から出そうになるのを
グッと堪えて、周りを見渡した。
「光秀、凛に手出しは許さん。」
「おや、それはそれは。」
随分とご執心なようで、と
未だ信長と光秀が静かに
言い合いをしている姿が目に入る。
(助けてっ、秀吉さん!)
ふと、凛が沖の方を見やると
家康に沈められかけている三成が見えた。
「こーら、家康。やーめーろ。」
三成の上に乗ろうとする家康を
秀吉はやれやれと嗜める。
「これくらいじゃ死なないでしょ。」
三成だし、と三成の上に乗りかかる。
「家康様、私は確かに凛様を
お慕いしていますが、それは‥っ!」
ゴボゴボと沈められる三成。
「うるさい。一生、沈んでろ。」
「おー。沈んでんな。」
「おっ!楽しそうだな、家康。」
なんだ?またヤキモチか?と
幸村と政宗が合流する。
「政宗さん、余計な事言わないで下さい。」
フッと家康が力を抜いた瞬間、
沈められていた三成が飛び出す。
「‥っぶは!!」
肩で息をしながらも笑顔が眩しい三成は
エンジェルスマイルを家康に向ける。
「家康様、お互い頑張りましょうね!」
「‥もう一回、沈められたいの?」
「何の話だ?」
幸村は不思議そうに首を傾げると
横に居た秀吉が苦笑いを零した。
「あー、まあ、いつもの事だ。」
「おいっ!俺も混ぜろ!」
家康と三成の間に政宗が飛び込み
大きく波飛沫が立つ。
「おーい、程々にしろよー。」
先に上がるからなーと、秀吉が三人に
声を掛けるが、もはや聞こえてはいない。
「あー、ハラ減ったー。」
幸村は空を見上げて、ふと気づく。
「あれ?そういえば‥」