第10章 Enjoy Summer
「ほお、なぜ着物を脱がないのだ?」
信長の視線が刺さる。
「俺が脱がせてやろうか?」
「おい、ヤメろ政宗。
凛が困ってるだろ。」
「秀吉、お前も見たいと
顔に書いてあるぞ。」
光秀はクククッと喉を鳴らす。
「佐助、女の水着ってどんなだ?」
「幸村には刺激的すぎるかもね。」
佐助の首には謙信の手跡が付いている。
バッと顔を赤くする幸村に
信玄は笑みを零した。
「幸、どんなものを想像したんだ?」
「おっ、俺は別に!」
「凛様の水着姿、見たいです。」
キラキラとエンジェルスマイルを
振りまく三成の視線が痛い。
「‥塩水で目、洗ってきたら?」
「家康様、塩水では目を
痛めてしまいますよ?」
「‥ついでに頭の中も痛めて来て。」
「凛、はやく脱げ。」
腰に姫鶴を取り戻した謙信が
早くしろと言わんばかりに眉根を寄せる。
「‥う。わ、わかりました。」
シュルリと凛が帯を解くと、
武将達の視線が一気に振りかかる。
(は、恥ずかしい!)
こんなことになるなら初めから
脱いでおけばよかった、と
心の中で後悔する凛。
「‥あんまり、見ないで下さいね。」
おずおずと着物を脱いだ凛は、
水着姿になると恥ずかしそうに俯いた。
白いビキニが肌の透明感を引き立て、
細い身体ながらも、付くべきところに
しっかりとついた程よい肉感と
結い上げた髪が色香を放つ。
「‥ちょ!お前っ、なんて格好してんだ!」
「まさに天女だな。」
フッと目を細める信玄。
「凛さん、ありがとう。」
真っ赤になる幸村の横で、
白ビキニをリクエストした佐助は
天を仰いで十字を切った。
「‥ほお。馬子にも衣装だな。」
ニヤリと怪しく笑う光秀。
「こりゃあ、いい。」
連れ去りたいくらいだな、と
政宗がヒュウと口笛を鳴らす。
「凛様、‥なんと美しい。」
「‥まあ、悪くないね。」
三成に嫌味を言うのを忘れ、
プイッと顔を背ける家康。
「凛、これ羽織ってろ。」
秀吉は自分の羽織を手渡す。
「あ‥ありがとう、秀吉さん。」
「猿め、余計なことを。」
ポツリと呟く信長の横で謙信は
無心で刀を振るっている。
かくして、武将達との海水浴が
幕を開けたのだった。