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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第9章 囲いの鳥


「‥凛。」

部屋に戻ると、謙信は
凛の存在を確かめるように
両腕の中に閉じ込める。

「‥謙信様、‥ッん。」

息つく暇も無く、縋るように
何度も唇を奪われる。


「‥凛。」

何度も苦しげに名前を呼ばれ、
胸がキュッと締め付けられる。

「‥愛している。狂いそうな程に‥。」
お前がいなければ俺は‥と、
謙信は切な気に眉根を寄せた。



「謙信様、私はどこにも行きません。」

あなたの隣が私の居場所だから。

この身体も、心も、
命さえもあなたの物だから。



揺らぐ二色の瞳を真っ直ぐ見つめる。

「私も‥愛してます。」

凛を捉える腕に力が篭もると
そのまま横抱きにされ、そっと
褥に降ろされる。

「‥凛。」

降り注ぐ愛に潰されないように、
壊さないように、壊されないように
凛は謙信を強く抱きしめた。

「謙信‥様っ」

お互いの身体の隙間を埋めるように
二人で愛に溶け合っていった。






隣で眠る凛の横顔を
愛おしそうに見つめ、
そっと頬を撫でる。

「‥誰にも触れさせはしない。」



謙信は縁側に一人で腰掛け、
ぼんやりとした月を眺めて酒を煽る。

「‥一本貰うぞ。」

ヒョイっと徳利を奪い
謙信の横に腰を降ろす信玄に、
つまらなさそうに鼻を鳴らした。

カチンと徳利同士を合わせ、
二人で同時に酒を煽る。

「何を考えている?謙信。」

「さて、な。」

どこか遠くを見つめる謙信を
信玄は目を細めてを見やる。


「姫を信じれないのか?」

「‥馬鹿な事を言うな。」

信じている、誰よりも。

決して、居なくならないと
そう言った凛の言葉を
疑ったことなど無い。


「だからこそだ‥。」

自由に羽ばたけば輝きを増す。

笑顔も、心も、魅力も。

誰しもが凛の虜になる。




だからこそ‥

誰にも触れさせない。

誰にも奪わせない。

その為には――――。





「‥羽は不要だ。」

謙信は静かに立ち上がり、
振り返りもせず歩き出す。

「‥謙信、お前は‥。」

信玄はそれ以上言葉にならず、
黙ってその背中を見送った。



ぼんやりと浮かんでいた月は
気づけば雲に覆われ、
ただ静寂の闇に包まれていた。


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