第7章 二人の宝物
「とと、どーじょ!」
ニコニコと満面の笑みで
桔梗は家康の頭に
ソッと秋桜の花を挿した。
ふふふっと両手を口の前で合わせ
可憐に微笑む桔梗。
(‥なにこれ。可愛すぎるんだけど。)
「とと。すーきっ」
「‥っ!」
トドメだと言わんばかりに
ぎゅっと家康に抱きつき、
頬を擦り寄せる桔梗に
家康は完全に打ちのめされた。
「ああ、もう!」
ぎゅっと桔梗を抱きしめ返す家康。
「‥可愛いのはお前だよ。ホント‥」
勘弁してよね‥と腕の中で、
目をパチクリさせる桔梗に呟く。
ひとしきり、頬を寄せ合うと
ゆっくりと抱きしめていた腕を解く。
「‥お前の名前は花から取ったんだ。」
秋に咲く美しい桔梗の花。
その花言葉は"永遠の愛"
俺と凛の愛の証。
二人の宝物である娘に
何があっても揺らがない思いを、
二人の愛を永遠に捧げようと。
この名前をつけた。
「‥お前は俺達の宝物だ。」
そっと頭を撫でると
桔梗は嬉しそうに微笑んだ。
「母様の様子を見にいこうか。」
「あい!」
家康は桔梗の小さなに手を取り
大事そうに包み込んだ。
まだまだ小さなその姿。
いつか綺麗になって恋をして、
自分達の元から巣立つのだろう。
(行かなくてもいいけど‥。)
しっかりと手を繋ぎ、歩き出す。
もし遠く離れた場所に行っても
俺達はこの子に愛を捧げ続ける。
俺達の愛と同じように
これからも、ずっと、
永遠に――――。
end.