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柊家のもう一人の天才【終わりのセラフ】

第1章 嫌われ者の入学


それで今に至るわけだ。



「……早く来い、一瀬グレン」


待つことに飽き飽きしているスイは、とりあえず一瀬グレンが早く来てくれることを祈るばかりだ。



「……でも深夜、一瀬グレンに会ったからといって、何するつもり?」


深夜は、うーんと考える素振りを見せる。


「まあ会うというよりかは、ちょっとした実力試しみたいなことしてみよっかなー、と」


「たとえば?」


「いきなり呪符を発動させてみたり、とかどう?」


「……お好きにどーぞ」


「もう、素っ気ないんだから」



深夜は再び苦笑する。




先ほども言った通り、深夜とスイはまあまあ仲が良い。

というのも、スイ自身が柊家にあまり興味がない故に、養子である彼のことを馬鹿にしたりしないからだ。


初めて深夜と出会った時、彼はいきなりスイに勝負をふっかけた。

そんな深夜に、呪符もなにも持っていない状態だったにも関わらず、スイは圧勝した。

それ以来、深夜は彼女に興味を抱き、あろうことか一緒に柊潰しをしないか、などと言うようになった。

スイからしたら、柊家が潰れようと現状を維持しようと別段どうでもいいことなのだが、さすがに深夜の仲間になって将来自分が反逆罪に問われるのはごめんだ。

今だって深夜とよく行動を共にしていることを、兄である暮人はあまり良く思っていない。

だが、スイ自身、深夜のことが嫌いなわけではないし、むしろ面白いやつくらいには思っている。

だから今もこうして彼の遊びにしぶしぶながら付き合っているのだ。





「でもさ」


深夜が話しかける。



「一瀬グレンって真昼の元カレなんだよね?」


「……ものは言いようだけど、まあそうなるかな」


「真昼は今でも彼のことばっかりだからね、ちょっと妬けるなぁ」


「……それもあって一瀬グレンを試す、とか言い出したの?」



スイが横目で深夜を見てそう尋ねると、彼は肩を竦めて言った。


「まあそれもあるかもね。だって曲がりなりにも真昼は僕の婚約者だから」


「そりゃね」


「そういや君は一瀬グレンを見たことがあるの?」


「……ない。父親の一瀬栄なら何回か会ったことあるけど」
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