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柊家のもう一人の天才【終わりのセラフ】

第3章 新入生代表


すると彼女は、もう、私の名前を聞いて思い知れ、と言わんばかりの表情になって、言った。



「私は、十条美十。あの十条家の人間です」



まるでもう、これでひれ伏さない人間などいないとばかりの勢いでにやりと笑って。




「どう?恐れ入りました?」


なんて言ってくるが、それに対してグレンは、




「てかさ、俺、やっぱ、十条なんて知らねぇんだけど」


と、何も知らない馬鹿を演じ続ける。



「ちょっ!冗談でしょ!?あの十条よ?『カエデの司鬼』を封じた、十条家の末裔よ?」


「知らん」


「っっっっ」



彼女はもう、何かを叫ぼうとして、しかし、言葉にならない、というような顔だった。




「まあいいです。無知なあなたにこれ以上自己紹介しようとは思いません」


「そうか。まあ、お前がアイドル志望だってことだけは……」


「だから違うと言ってるでしょう!」



と美十が叫んだ。


それも、それなりに騒がしい、講堂の中でも、ひときわ響くくらいの大きさで。

それで校長の言葉が止まる。

一斉に視線が集まる。


それに美十は、しまったという顔で固まって、それから赤い髪に負けないくらいに顔を真っ赤にして、


「あ、あ、あの、失礼いたしました。続けてください」


と、か細い声で言った。



そしてそれで、再び校長が話し始めた。

他の生徒たちもすぐに顔を背けた。おそらく、髪色だけで彼女の家柄がわかったからだ。

それくらいに、十条家と言うのは有名な、力を持った家だった。



美十は恥ずかしそうに小さくなっている。

その彼女を慰めるように、グレンは言ってやる。



「はは、良かったな?一瞬アイドルみたいに注目が集まっ……」


「あなた、殺しますわよ?」



ドンッと背中を殴られる。

その力はあまり強くない。

おそらく彼女は、体に何らかの呪術を付与して、戦うタイプなのだろう。


なにせ十条家の人間は、鬼を腕力で圧倒した____と、歴史書に書かれているのだから。


それほどに、十条家は武闘派の家として有名だった。

暗殺や護衛の役職につく者が多い家系。

おそらく彼女も、相当の実力を持っているだろう。


グレンは彼女を値踏みするような目で見て、思う。




(さて、俺にはこいつを殺せるだけの実力があるか?)
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