第2章 白髪の二人
だがこいつが本当に柊家の養子なのかどうかは、わからなかった。
なにより、もしこいつが言っていることが本当だとしても、こちらの本心を明かす必要性はまるでなかった。
だからグレンは、「誤解です」と答えようとした。
「あなたが思っているような人間では、自分はありません」と答えようとした。
だが、その前に____
深夜はこんなことを言った。
「ちなみに僕の相手は、真昼ね。柊真昼。彼女の相手になるように、僕は生まれた時から育てられた」
瞬間、自分が反応してしまったのが、わかった。
深夜を見る。
するとその視線を受け止めて、深夜は笑う。
「おっと、あっさり本性が出た」
「なんのことでしょう」
「いやいや、別にいいよ。今日、すぐ君と友達になろうだなんて、思ってないから」
「…………」
「ちなみに真昼も、この学校に入ってるって、知ってた?彼女は優秀だから、新入生代表としてスピーチするらしいよ。すごいよねぇ、君の、元彼女は……」
なんて言葉に、グレンは表情を変えないまま、答える。
「別に、真昼様と私は、そのような関係では……」
「いまは僕の許嫁だけどね」
「…………」
刹那、グレンは言葉を止めて、少しだけ強い視線を深夜に向けてしまった。
すると深夜はそれを見逃さずに、整った顔でにこにこと笑う。
そして挑発してくるように、言う。
「どう?悔しい?」
「別に」
「は、はは、その顔。もう、野心を全然隠せてないよ。だから仲良くやろうぜ?言っとくけど、僕、そんなに真昼と仲良くないから安心してよ。柊の名前をもらっても、しょせんは養子。しょせんは下賤のクズの出。本家の中で受けている扱いは、いま、君がここで受けてるものと一緒だよ。もちろんムカツクから、全部壊してやろうと思ってるけど」
深夜がペラペラとそんなことを言うと、黙って聞いていたスイが、
「……反逆罪に問われる」
と至極真っ当な忠告をする。
それに対して、
「大丈夫大丈夫、だって君は僕のことを柊に突き出したりしないだろう?」
「……どーだか」
「今まで何回も柊の悪口言ってきたけど、まだ僕が生きてる、ってことは大丈夫ってことだよ」