第2章 白髪の二人
そこでグレンの隣に座っていた女が、どく。
「ありがと」
にっこり深夜は微笑んで、グレンの隣に座ってくる。
そして、いまだ立ったままのスイに話しかける。
「スイはどうするの?」
「……私もそこにする」
彼女はそう言って、深夜の前の席に座っていた生徒に目を向ける。
その瞬間、その生徒が慌てて立ち上がって、
「こ、こちらをどうぞ、スイ様」
などと言う。
「……ありがと」
スイは表情を変えずに、そのままその席に座る。
そして、深夜が、
「ああ、みんな、邪魔してごめん。ホームルーム続けてください」
なんて言うと、女教師は、教師とは思えないほど慌てて教壇のほうへと戻り、再びホームルームが始まる。
入学式の手順について。
この呪術学校がどういうふうに始まり、授業はどうなっていくかについて。
それをしばらく深夜はにこにこと聞いている。
スイははなから聞く気がないのか、本を読んでいる。
グレンは再び、窓の外へ目を向けている。
するとそこで、
「ねぇ君」
深夜が、声をかけてきた。
「…………」
「えーと、一瀬グレン君、だっけ?グレンって呼んでいい?」
それにグレンは振り返り、深夜を見る。
やはりにこにこ笑っている。
グレンはその、深夜の顔を見つめ、答える。
「私にお声がけでしょうか?」
すると深夜は笑って、言った。
「なにその敬語?」
「柊家の方には逆らうな、と、厳しく教育されております」
「え〜、ほんとにぃ?」
「はい」
「そっか。そりゃ〜、つまんないな」
「申し訳ありません」
グレンは頭を下げる。
それ以上なにも言ってこないようなので、再び窓の外を見ようとすると、
「……今朝、わざとだった」
「はい?」
「……わざと深夜の生温い攻撃を喰らった」
くそ。やはりバレていた。