第2章 白髪の二人
そして女のほうは、というと。
深夜と同じく白い髪。緩やかなウェーブのかかったその髪は綺麗に整えられており、背中まで届くほどの長さがある。
学校指定のセーラーの制服の胸元には、柊家の紋章をつけている。
ずっとにこにこ笑っている深夜とは対照的に無表情、だが冷たさは感じさせない。
どこか現世離れしているその出で立ちに、生徒たちはうっとりしている。
こいつが、柊スイ。
深夜が女教師と話している間も、彼女はずっと黙ったままだ。
何を考えているのかまったく分からないやつ、というのが第一印象だった。
話がどういう方向に進展したのだか、深夜がこちらに近付いてくる。
そしてニコッと笑って、グレンの隣に座っている女に言う。
「ね?僕、ここがいいんだ。席替わってくれないかな?」
それに女が驚いたように一瞬動けなくなってから、
「あ、は、はい!もちろんでございます!」
などと言って、慌てて立ち上がる。
それに女教師が言う。
「で、ですがそのようなネズミの隣に……」
とそこで、
「……うるさい」
「え」
「……うるさいと言ったの」
スイが小さいがよく通る声ではっきり言った。
うるさいと言われた女教師のほうは、口をパクパクさせている。
「え、あ、あの」
「……ネズミだとか、どうでもいい。分かったのなら黙って」
「も、申し訳ございません、スイ様……」
教師が生徒に深々と頭を下げているのは、普通ならあまり見ない光景だ。
だが、相手は柊様、怒らせてしまえば首が飛ぶのは教師のほうだ。
教室の空気が凍りついていくのが手に取るように分かる。
それだけの力をこの柊スイという少女は持っているのだ。
絶対零度に包まれかけたこの空間を元に戻そうとしたのは、同じく柊の名を持つ深夜だった。
「まあまあスイ、そんなに怒らないで」
「……怒ってない」
「あはは、まあでも教師が教え子を、ネズミなんて言うのはどうかと思うよ?」
女教師は柊家の2人に咎められて顔面蒼白だ。
「あ、その……」
「同じクラスの仲間同士。みんなで仲良くやらなきゃ」
「それは……」