第2章 白髪の二人
とそこで、女教師が言う。
「もうみなさんお気づきのとおり、このクラスにはあの、深夜様とスイ様がお通いになります。その身に余る光栄を……」
うんぬん。
つまりそれほど素晴らしいお方が、一緒のクラスというわけだ。
それを生徒たちは夢を見るような顔で聞いている。さっきまでの、ネズミを見ているときの顔とは別物の態度。
その馬鹿馬鹿しいほどにわかりやすい態度の変化に、グレンはまた、笑う。
それから窓の外を見る。窓からは校門の外の桜並木が見える。
それを見つめながら、
「時雨と、小百合が心配だな」
小さく呟く。
するとそこで、ガララッと扉が開く音が、聞こえた。
その瞬間、あからさまに教室中が静まり返り、緊張するのを感じた。
そして、
「あれぇ、なんでこんな静かなの?」
そんな声が、教室の後ろの出入り口でする。
男の声だ。
女教師がそれに、緊張した声音で、
「こ、これは深夜様にスイ様、ようこそ私のクラスへ……深夜様のおせきはこちらでござい……」
が、遮って深夜は言う。
「えー、嫌だよ、そんな前の席」
「え、あの……」
「僕、そっちの席がいいや。だから替わってもらえるかな?」
「なっ、そんな……しかしそれは……」
などという、まるで王様が現れたかのようなやりとりが聞こえてくる。
どうやらやっと、柊の血の者がここへやってきたようだった。
それにグレンは顔を上げ、教室の中へと目を向ける。
だがそこで、少しだけ驚いてしまう。
なぜならそこにいた男は、今朝、校門でグレンに向かって呪符を投げつけてきた男だったから。
隣にいる女も、その現場にいた。
白い髪。詰め襟の制服。にこにこ笑っているように見えるわりには、鋭い眼光。自信溢れる笑み。
どうやらこいつが、柊深夜のようだった。