第2章 ー月ー
そして計画を実行に移す時が訪れた。
上品を絵に書いたような男が二人、大野の主の手引きで蔵の中に入って行く。
旦那様は男達を蔵に招き入れた後、それ程時を置かずに蔵から出て来る筈だ…。
その光景を、潤は木の陰で息を潜め、その時を伺っていた。
緊張のせいだろうか、潤の手は震え、額には脂汗が滲んだ。
早鐘のように打ち付ける鼓動の音が聞こえやしないかと、不安が込み上げてくるのを、深呼吸を繰り返して、なんとか抑え込んだ。
程なくして大野の主が蔵から出て来ると、男達が蔵を後にするまでの、その間だけは蔵の錠が開いたままになる。
潤はその隙を狙って重い扉を開き、蔵に忍び込んだ。
薄暗闇の中、物音を立てないよう、手元にも足元にも、更には息遣いにも細心の注意を払った。
それでもどうにもならない胸の鼓動だけが、潤の頭の中で大きな音を響かせていた。
蔵の奥へと足を進めると、そこに一枚の扉があった。
この扉だけ、他とは造りが違う?
触れた感触と、明らかに違って見えるその扉を慎重に開き、耳をそばだてる。
瞬間、潤の耳に飛び込んで来たのは、男達の荒い息遣いと、絶え間なく上がる悲鳴にも似た嬌声だった。