第8章 ー生ー
照はずっと思っていた。
私が智を生かしたのは間違いだったのではないか…
私があの時、一思いに智を殺めていれば、智は悲しい涙を流すことなどなかったのではないか…
もし私が…
二人が旅立ってからもう何年も経つと言うのに、照の胸は未だ自責の念に溢れていた。
でもそれも今日で終いだ…
照はゆっくりと瞼を閉じた。
もう楽におなり?
どこからともなくそんな声が聞こえたような気がした。
いいのかい?
私の罪を許してくれるのかい?
照はふっと息を短く吐き出すと、口元を僅かに綻ばせ、閉じた瞼の端から一筋の涙を流した。
ああ…、これで漸く私も楽になれる…
いつしか照の周りを二つの光が包み込み、やがて一つの大きな光に変わったかと思うと、小さな小さな白い光を導くように空へと昇って行った。
あの日と同じ、一点の曇りもない、透き通るような晴れ渡った青空に…
『ー生ー』完