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雪・月・華〜白き魂〜【気象系BL】

第8章 ー生ー


「だ、旦那様…」

照は咄嗟にその場に膝を折ると、額を床に擦り付けた。

「後生でございます。どうか、どうか…」

大野の恐ろしさを嫌と言う程知っている照だ。

その場をどう取り繕おうか、両手の平を擦り合わせながら、必死で考えを巡らせた。

なんとしてでも智だけは守らねば…

が、照の思いは物の見事に打ち砕かれた。

大野は照の腹を乱暴に蹴り飛ばすと、手にしていた刀を振り上げ、己が妻に向かって振り下ろした。

「ひっ…、ひぃっ…!」

照は思わず目を覆った。

このままでは殺される…

慌てた照は、吹き出る血飛沫を浴びながら、無邪気にも瞼を擦る智に覆い被さると、

「私はどうなっても構いません。でも、どうか…、どうか、この子の命だけはお助け下さいまし…」

「てる…、くるし…よ…」

銀糸の髪を赤く染め、照の下で苦しそうに智が藻掻く。

「主を謀っておいて命乞いとは…、どこまで私を愚弄するつもりだ」

「愚弄などと…、め、滅相もございません…。私はただ…」

「ただ、何だ。申してみよ? 返答次第では、生かしてやらんこともないが…」

信じちゃいけない…

例え何十年も仕えた旦那様とはいえ、鬼の化身と化した今となっては、信じることなど出来るものか…

でも…、この子の命を救うためには…

致し方ないこと…、照は自分に言い聞かせ、智から離れると、再び額を床に擦り付け、事の顛末を洗いざらい打ち明けた。

智を守るため…

繰り返し言い訳を重ねながら…
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