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雪・月・華〜白き魂〜【気象系BL】

第7章 〜空〜








ああ…焼けるよ…焼ける…
翔くん…





目を覚ますと、翔の身体は外に投げ出されていた。
身体はびっしょりと下履きまで濡れている。
泥と煤に塗れて起き上がると、後ろを振り返った。

その瞬間、蔵が大きな音を立てて崩れ落ちた。

「ああっ…」

煙と熱風が翔の身体を襲った。

思わず身を地面に伏せて、頭を抱えた。
その翔の身体に、雨が容赦無く叩きつける。

「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…」

煙と熱風が過ぎると、急いで身を起こした。
目に入ったのは、真っ赤な空。





空が燃えている



火のせいで赤いと思っていた空―――



血のような赤の朝焼けだった。





「嘘だ…智…?智…っ…」

足が縺れて前に進めない。
集まってきた使用人たちが、必死で消火作業をしている中をかき分けて蔵に突き進んだ。

「坊っちゃん!だめです!まだ火がっ…」
「離せぇっ…離してくれぇっ…智がっ…智がまだ中にっ…」
「いけませんっ…いけませんっ…」

何本もの手が伸びてきて、翔の身体を拘束した。
喉が枯れるまで、翔は智の名を叫び続けた。

まだ中にいる…
助けて…

助けてやってくれ…


頼む…



頼む…





しかし、翔の悲痛な叫びは叶えられることはなかった
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