第6章 雪・月・華 ~その白き腕に~
「智…?」
智は乱れた襦袢を直すこともせずに、体液に塗れた身体を起こした。
その赤い目で潤を無邪気に見上げる。
「潤…五助は…?」
「ああ…ここにいるよ」
「嬉しい…」
懐に入れた五助を見せると智は白い腕を伸ばす。
「だめだよ…身体を清めてから…」
遅い時間に”これ”が行われるときは、翔は現れない。
この家の主人が蔵の前まで来て、錠を下ろすだけだ。
一晩放っておかれて、翌朝になると照が智の身体を清める。
潤は懐から手ぬぐいを出すと、傍らに置かれた手桶に満ちている水につけて絞る。
そのまま男たちの体液に塗れた智の身体を拭っていった。
「ありがとう…潤…」
身体を清めることは誰にも言ってはいけないと智には言ってある。
潤が夜な夜な忍んでくることも。
智はそれを素直に守っている。
智にはわかっているのだ。
他の人に言ってしまえば、潤が来られなくなることを。
「あ…」
潤が背中を拭こうと智の身体を捩った時、智の口から甘い声が漏れた。
「…どうしたの…?」
湧き起こる欲情を抑え、なんとか声を出す潤。
白い頬を朱に染めて智は潤を仰ぎ見る。
「精が…」
潤は黙って智の襦袢を捲り上げた。