第5章 最憶君 <based on 雪・月・華>
「…しょうくん?
ふふふ、あったかいなぁ…」
僕の肩に顔を埋める君…。
白く美しい絹糸のような髪の毛を何度も撫でる。
傷ついた愛しい人を少しでも癒せるように…祈りを込めて何度もその髪を梳く。
水分の多い紅い瞳が僕の顔を覗く。
「智くん…体、辛いところはない?」
擦れた手首に軟膏を載せ、油紙で包み布で巻く。
細い手首を摩りながら聞くと小さく頷く。
「しょうくんがやさしくしてくれるからへいきだよ?
ねぇしょうくん…ぼくはいつになったら”人間”になれるんだろうね?」
父様が言い続けた言葉をそのまま素直に受け止めている智。
『お前は白い悪魔だ。
人間になるためにはここに来る人たちの言う事を聞きその身を任せないさい。
そうすれば人間になれるから』
無垢な智にそう言い聞かせたんだ…。
嘘つき…そんな事をしても治らないと屋敷の者たちが言っていた。
それなのに智はどんなに惨い事をされても父様の言葉を信じて、その身に汚い欲望を受け続けてるんだ…。
「智くん…辛いよね…
どうしたら…どうしたら…」
泣いても仕方ないのに涙が溢れる。
智くんは白く長い指を僕の頬に滑らせて涙を拭い…そのまま指を口に入れた。
艶かしいその仕草に…ずっと抑えている気持ちがあふれそうになる。
「しょうくん…なかないで?
どっかいたいの?
ぼくね、”人間”になったらしょうくんといっしょにあそびたいんだ。
いまのあそびじゃなくて…ちがうあそび…。
あるんでしょ?」