第5章 最憶君 <based on 雪・月・華>
夜明け前…人影が庭を横切る。
闇にまぎれるそいつらが今日、智を穢したやつら…。
出来る事なら八つ裂きにしてやりたい。
あの綺麗な人を穢した奴らをこの世から消し去りたい…。
出来もしない事を妄想するしか出来ない…。
窓の外がうっすらと明るくなりはじめる。
もうすぐ夜が明ける。
あの人に…智に会える…。
バレないように着物に智の好きなお菓子を忍ばせ、いつもの支度をした。
薄明かりの中、蔵の入り口を目指して歩く。
走りたい気持ちを抑え、音を立てぬように慎重に動く。
重い蔵の扉を開け、ゆっくりと扉を閉める。
この扉から智を連れ出したいのに…。
どうやってもそれが出来ない…。
内側の扉を一枚開けると広がる空間に智はいた。
薄い布団に体を丸めて眠る人…。
起こさないように慎重に近づき、傷ついた体を手当てしていく。
手首と足首に残る紅い擦過傷…。
あいつら…智を縄で縛ったんだ…。
華奢な体を蹂躙するだけじゃ飽きたらず、身動きできないようにして貪ったんだ…。
沸々と沸き上がる怒りを沈めるように傷ついた手足に唇を落とす。
「…んっ……んぅ?
しょ……くん?」
カサカサに嗄れた声で小さく僕の名前を呼ぶ。
どうしようもないいとおしさが溢れて…華奢な体を抱き締めた。