第3章 ー華ー
思いがけず涙を流す照に、潤はただただ戸惑うことしか出来ず潤はそっと照の手から自分の手を抜き取ると、今度は小さく震える照の手を自分の手で包み込んだ。
「どうして? どうして蔵に行ってはいけないんだ? 理由を教えてくれよ? な?」
切羽詰まったような潤の物言いに、照は大きく息を吸うと、それを一息に吐き出し瞼を伏せた。
「智坊ちゃんの病気はね”白子症”と言ってね…不治の病なんだよ」
「治らない…ってこと?」
照は潤の問いかけに無言で頷き、天を仰いだ。
「そ、それじゃあ旦那様はなんであんな…あんな酷いことを…?」
不治の病に侵されているという智を、蔵の奥の薄暗い座敷牢に閉じ込め、下碑た男達の慰み者にするような、売春まがいの真似をさせているのか…
潤には一つの考え浮かんだ。
「金が目的か?」
”そろそろ大野家も危ないんじゃないか…”
最近になって、使用人たちの間で俄かに噂されていたことだ。
「そ、それは私にも分からない。でも、お前はこれ以上関わらない方がいい。でないと…」
途端に口篭る照に、潤の鋭い視線が向けられる。
「でないと…、なんだ…?」
潤の氷のように冷たい声色に、照の背中を冷たい物が流れた。