第2章 ー月ー
瞳の色と同じ、赤い襦袢を身に纏ったその両の肩から、銀糸の髪がサラサラと零れ落ちる。
その美しさに、潤は思わず息を飲んだ。
と同時に、いつだったか、翔の自室で盗み見た本の中に描いてあった天使の絵が、不意に潤の脳裏を過ぎった。
“化け物”なんかじゃない…
まるで…天使様のようだ…
「俺は…潤…。あな…たは…?」
漸く絞り出した言葉は、酷く掠れていた。
「ぼく? ぼくは智だよ」
小首を傾げ、血の色を宿した瞳が細められ、紅を引いたような唇から発せられた、見た目よりも遥かに幼い物言いに、潤は違和感を覚える。
が、それ以上に”男”だという現実に潤の思考は停止する。
「君は…」
言いかけた瞬間、潤は思わずその先の言葉を飲み込んだ。
天使だと信じて疑わなかった智の顔が、まるで猥らな娼婦のそれへと変わっていたからだ。
「じゅ…んもあのおじさんたちみたいに、ぼくと遊んでくれるの?」
智が肩に掛けただけの赤い襦袢をスルリと落とし、白い肌が露わになる。
するとその身体に無数に散らばる赤い花が、揺ら揺らと揺らめく蝋燭の灯りの中浮かび上がった。
それは明らかな激しい行為の痕を思わせるものだった。
「違う…俺は…」
潤は慌てて否定しようと、首を何度も振って見せるが、言葉でどれだけ否定しようとしても、身体は正直で、中心に集まる熱はどんどん温度を増していった。