第2章 ー月ー
潤は自分の中に芽生え始めた欲望を押さえることが出来なかった。
照の監視の目を盗んでは、男達が蔵に入って行く姿を見かけ、隙をついて何度も蔵に忍び込んだ。
その度、紳士とは名ばかりの男達は、白い肌と赤い目をした化け物を、まるで性玩具のように扱った。
無骨な手で白い肢体を撫でては、獣のような舌で舐り回した。
時には縄で縛り上げ、自由を奪いながら行為に及んだこともあった。
そして最後には獣のような雄叫びを上げながら、白い化け物に向かって、薄汚い欲望を浴びせかけた。
潤はその淫靡とも言える光景を、ただ息を潜め覗き見ていた。
ある時、いつものように男達の後をつけ、蔵に忍び込んだ潤は、仕事の疲れと自慰の末の脱力感からか、長持ちの間に身を潜らせたまま、不覚にも居眠りをしてしまった。
しまった…
目を覚ました時には、蔵は外側から鍵が閉められ、潤は蔵から出る術を無くしてしまった。
だがそれは潤にとって、白い化け物の正体を確かめるまたとない機会だった。
潤は蔵と、その向こう側を隔てる今にも朽ち落ちてしまいそうな扉を、恐る恐る開けた。
ギギッと軋みながら開かれた扉に、白い化け物がのろのろとその顔を上げた。
「だぁれ?」
甘さと気怠さを含んだ声と共に、月明かりの下、赤い瞳が潤を捉えた。