第39章 好きな物
自「…………」
広い手入れ部屋で寝ている包丁に薬を塗り込む
包丁の体はひび割れていて塗ってる間にもピキピキと割れていく音が響く
包「ん……」
気が付いたのか瞼が痙攣し薄く目を開ける
顔の前でヒラヒラと手を振ると勢いよく目が見開かれる
自「包丁?」
包「あるじ!……あれ……」
自「大丈夫?」
包「…っ!誰だ!遡行軍か!」
自「っ」
瞬時に頭元にあった自分の刀を手に取り後ろに回り込まれる
突然の事に対応出来ず首に刀を添えられ金属の冷たい感覚が伝わる
自「路地裏に倒れてたんだ
それで助けた」
包「……里親本丸……?」
自「はい」
包「……」
スルッと腕が解かれ冷たい感覚もなくなり
それに少し安堵し一息つくとこちらに向かってくるようにトタトタと軽い走る音が近づいてくる
五「包丁!」
包「ごこにぃ!?」
汗だくになりながら手入れ部屋に入ってくる五虎退
きっと包丁が来たことを聞いて駆けつけてきたのだろう
五「包丁……怪我は」
包「今はどこも痛くないよ」
よかった………… そう言って尻もちをつき私を見て微笑む
自「包丁、お前がこの本丸と契約しようがどうしようがどちらでも私は構わない
ただ今は体の傷を癒せ」
五「包丁、僕からもお願いします」
包「……ごこにいがそう言うなら」
しょうがなくと言った感じで布団の上へ戻るとひび割れた腕を私の前に出す
包「言っとくけど!ごこにいに言われたからだからな!」
自「ありがとな
…………包丁、いまから私が説明することに答えてくれ
お前の主はもうこの世には居ない、そうだな?」
薬を塗るが治ると同時に他の場所にヒビができる
これではキリがない
包丁を見やると傷ついた顔をして私の顔を見ている
まるで、なんでお前に言わなければならないんだと訴えるように
自「しかも……そろそろ、お前の主の力が体の中から消える。
持って1週間くらいだ
ひび割れ薬を塗っているが治ると、ほかの場所がひび割れする」
包「……へぇ、それで
あんたは何がしたいんだ」
自「助けたい」
包「俺はそんなこと望んでない」
包丁が顔にかかった髪の毛を自分の耳にかけてため息をつく
隣の五虎退も驚いたような顔をした
実際、私も驚いた