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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第9章 まだだよ(澤村大地)




じゃあまた学校で、なんてすぐに別れるのも変な空気で、あたしたちは傾きかけた陽の中で立ち往生をした。遠くからかすかに流れてくる夕焼け小焼けの放送を、ふたりで黙って聴いていた。
 
 
「今度、男バレは試合があるらしいね?」ぎこちなさしかない動きであたしは話題を出した。
 
「お、よく知ってるな」
 
「なんか、知ってました」嘘です。本当は道宮ちゃんに聞きました。
 
「大会じゃなくて練習試合だけど。まあ相手は強豪だし、勝ちたいよ」
 
「強豪じゃなくても勝ちたいのでは」
 
「あ、確かにそうだな」ハハ、と澤村が笑う。釣られてあたしも、へへ、と顔を緩めた。
 
「あのね澤村。試合の前に、この神社でお参りすると勝てるんだよ」
 
「そうなのか?」
 
「あたしが今決めた」
 
「なんだそれ」
 
澤村は呆れた声で、でも、どこか安心したように眉尻を下げた。そんなことあるわけないのに、泣くのかな、とあたしは少し身構える。もしかしたらキャプテンなんだし、試合の前で緊張しているのかもしれない。彼本人も自覚がないくらいの小ささで。
 
 
「じゃあせっかくだから、願掛けしてこようかな」
奉納、と文字が刻まれた赤い鳥居を澤村がくぐっていく。「あ、賽銭」と呟いた彼の背中に向かって「これ使っていいよ」とあたしは呼びかけながら、スカートのポケットの中を探った。
 
差し出した50円玉に、澤村は大げさなくらいの驚きと遠慮を見せた。
 
 
「いらないよ。悪いって」
 
「気にしないでよ。50円でそんな恐縮されたら、こっちも困るんですけど」
 
「でもさ、」
 
「これのおつりだから」
あたしは、まだ残りがほとんどあるペットボトルを掲げた。炭酸水は透き通っていて綺麗だから、つい買ってしまう。でも味がないから実はそんなに好きじゃない。大人の飲み物なのかもしれない。こんな味気ない大人にはなりたくないけど。
 
上にあがっていく透明な泡に、薄い青と夕日の色が混じっている。変わっていく季節が全部、この中に閉じ込められていく気がした。
 
 
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